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自分は人間だ。そう思う。だってそうだろう。
手足がある。頭も付いてる。目が二つ、鼻と、口。耳もついてる。
でも、親父や、幼少のころ一度だけ会った“狼”たちは、俺を天使だという。
ばからしい。ばかげてる。
なにが天使だ。俺は人間だ。ただの人間だ。



おれは時折、自分が人間ではないような気がする時がある。
姿かたちは同じでも、そこに宿る魂は健全なものではないんじゃないかと。
でも、仮にそうだとして、じゃあおれは一体何なんだろう?
夢で見るばけものは、人間じゃない。
だけど、あれはおれと同じものを持っている気がする。
おれはだれだ?



ユキは人間がこわい。人間なんてみんなバカばっかり。
でも、自分だってその人間のうちの一人だって思うと、なんだか不思議な気分になる。
人間なんて、っていう言葉を使うのって、ちょっとおかしい。
まるで自分は人間じゃないみたいに。
そんなこと、あるはずないってわかってるけど。
ユキってちょっと、おかしいのかな。



ぼくは人間だ。
使命もなく、運命にもとらわれず、ただの一人の男として生きている。
ぼく一人が、こんなにも平凡であるという幸せを独り占めしていいんだろうか。
彼らの人生は過酷だ。行き着く先に必ず幸せがあるとは限らない。
ぼくは人間だ。
ぼくは、彼らの痛みを知る術を持たない。
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