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皆月トウヤという名前は、偽名である。
本当の名前はメルセルという。
百智ユキという名前は、偽名である。
本当の名前はマギエルという。
彼らはそれを知らない。
知っているのは自分、ディリア・ハインツ・ウェーズのみである。

彼らはマナ、オドを使う。アツィルトの使者という化け物と戦い、勝つことのできる唯一の存在である。
門と呼ばれる力を持ち、メルセルは引きずり込む「向こう側」、マギエルは引きずり出す「こちら側」の能力を持つ。
彼らは力の両極端であり、その力を持つ以上二人いっしょにはいられない。

世界は一つではない。無数の世界があり、そこには無数の命がある。
世界と世界の狭間からやってくるアツィルトの使者は、神の叡智を授けられた人間の傲慢さに対する鉄鎚であるといわれている。
かつて世界がまだ一つで、命もひとつであったときに生み出された神の叡智、それを託された知恵の狼、力の狼、理の狼は、やがて生まれ、育ち始めた人間に叡智を託した。
しかし彼らは神の座を狙い、己の力を過信し、反逆する兵器を作りだした。

彼らを兵器と呼ぶには、いささか人間味に溢れすぎている。
彼らはよく笑い、よく泣き、人間よりも人間らしい生き物だ。
彼らの役目は人類という種の保存、世界崩壊の阻止、そして隠されてはいるが、彼らは知っている、やがて自分たちの力を合わせ、世界、生命の再構築を行うことだ。
自分はそこに居合わせ、3匹の狼たちに再び歩みだす世界の叡智を授けられる。

誰が一番かわいそうなのか。かわいそうなものなどいるのか?
あらゆる生き物は親から生まれる。彼らはたまたま親が「無」だっただけだ。
戦いに身を投ずる危険?そんなものは誰だって持っている。彼らには力があり、戦う相手がいる。それだけだ。
世界の命運が…

「ふがっ」
「うぅ~…」

…命運が、彼らに…

「カロリーが…」
「…甘っ」

…寝言がうるさい。
俺も寝よう。

「ユキ…」
「おにいちゃんうざ…」

…このレポートは破棄することにする。真面目に書いてあほらしい。俺が馬鹿だった。ちくしょう。

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(俺は、俺だけは知っている)
「んッ、はぁ…」
「もう動く、我慢できない」
「ま、てって…俺こっちじゃ…」
酒に酔う、男に酔う、灰色の髪に、金色の左目に、ふとした時に見せる、恐ろしいほどにやさしい眼差しに。
「いつも…おれが、こうされてる」
トウヤが言う。まるで腹の中が燃えるように熱く、ああそうだ、いつも俺はこんなことをこいつに強いているんだと実感する。
「強いて…」
「ない、おれはそれが…これが、好きだからする」
そしてこういう時、トウヤはいつもほんのわずかな言葉から心を察し、また本人もわずかな言葉で真実―――あるいは嘘―――を伝える。
(俺だけが…)
「ウ…ん、あっ、あ!」
「はぁ、あぁ…」
「まて、まてって…まっ、あ、」
涙が出るほど気持ちよく、まったく上も下も、何もかもを忘れて、いつもは組み敷いている彼の体に腕をまわし、背中に爪を立てた。
徐々に速度を上げる腰の動きに思考がついていかず、酒の力も手伝って次第に音もすべて遠くなる。
「も、出る」
俺も、と彼の頭をつかみ、抱え込むようにすると、耳元で泣きながら彼が誰かを呼ぶのが聞こえた。
(誰かなんてのは、俺だけが知ってる)
「あ、あっ、う…ッ」
「ンッ…」
声は頭蓋のなかで反響し、ディルの思考の中をまるでピンポン玉のように跳ねまわる。
ユキ、とささやく声。甘く、誰も、他の誰も、聞いたことのない声で。
(いもうと…自分の)
ぐったりと倒れこんできた体を、抵抗せず受け止めながら目を閉じる。
(こいつは…自分の妹を抱きたいと思っている)
信じられないほど早く脈打つ鼓動を体内で聞きながら、やわらかい彼の髪を指先でいじった。
(なにも信じられないと泣く、彼女の姿が、俺には見える)
そのことをすべて洗いざらいぶちまければ、彼は自分だけのものになるか。
(愛しているという言葉の意味と重さも知らない俺たちが)
着飾って、気取って、その言葉があたかも自分だけのものであるかのように振る舞う。
(俺たちが…どこへ行けるというのだろう)
朝はもうすぐそこだろうか。鳥が飛んでいるのだろうか。
分厚いカーテンにさえぎられた窓の向こうでは雨が降っているのかもわからなかった。

ディルの家に勝手に上がりこんで、買いあさってきたマンガをひろげてだらだらする。
「おもしれえー」
「おまえ!家にあがるのはいいとして、人の酒勝手に飲むなよ!」
「うめえー」
「うめえだろうな、俺の秘蔵の焼酎あけてくれて、本当に感謝してるよ」
「さきいか食う?」
「食わねーよ」
あちこちに散らばった空き缶やらを集めて、そろそろ支度するか、とキッチンに立つディル。
今日はオムライスらしい。

「なーなーディル」
「なんだよ」
「好きだ」
「ぁン?」
「あいしてるー」
普段口にも出さなく、たぶん思ってもいないだろうことを言ってはうひゃひゃと床をころがりまわるトウヤ。
「…おまえ、何読んだ?」
「“よつばと”最新刊」
「あー…」
「よつばかわいい…あ、かわいくない」
「なんだよそれ」
「“あべこべごっこ”だよ」
ピーマンを刻みながら振り向く。

「好きだーあいしてるー結婚してくれー」
「あべこべか」
「さあ、どっちでしょう」
「…愛してる」
「!」
「あべこべ」
「なのか?」
「どっちでしょう」
「いじわる!」
「あべこべ」
「…いいやつ!」
「まあな。飯食うぞ」
「食っていいの?」
「あべこべおしまい」
「いただきまーす」
「グリンピース除けんな」
「豆まずい」
「食え」
「おべぇー」

トウヤ、影響されやすい。




会話文、どっちがどっちかわからなくても、もうしょうがない。申し訳ない。こんな調子でいきます。

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